2021年1月11日 6. 「喪失」 小説『レイト・サマー』第3章(前編)-あるオートガイネフィリアの物語- 3 翌日になっても、あのクリニックでの出来事が頭を離れなかった。あれは夢だったのか、現実だったのか?その区別も私の中ではひどく曖昧だった。 私は夢遊病者のようにふわふわとした感覚の中に居た。仕事はまるで手につかず…
2021年1月11日 5. 「麻里子」 小説『レイト・サマー』第2章(後編)-あるオートガイネフィリアの物語- 目を開けると、夜の空気に包まれていた。 私はどこかの部屋のベッドで横になっているらしかった。部屋といっても、さっきまでいた診察室ではなかった。どこかの寝室に居るようだった。私は目だけで辺りを見回してみた。シェード付き…
2021年1月11日 4. 「インナー・ワールド」 小説『レイト・サマー』第2章(中編)-あるオートガイネフィリアの物語- ひまわりクリニックは、神楽坂の石畳の坂道の途中にある、古い佇まいの2階建ての洋館だった。建物の壁面には瀟洒な窓を避けるように涼しげに蔦が生い茂っていた。入口は緑の外構えからローズアーチにより玄関に導かれていた。まるで、…
2021年1月11日 3. 「いざない」 小説『レイト・サマー』第2章(前編)-あるオートガイネフィリアの物語- 2 ガールフレンドと別れた場所は実際には15分も歩けば駅に着くところだった。急げば終電に間に合ったかもしれない。でも、それはどうでもよかった。私はタクシーで部屋まで帰ることにした。私はとにかく疲れていたのだ。 程…
2021年1月11日 2. 「熱帯夜の孤独」 小説『レイト・サマー』第1章(後編)-あるオートガイネフィリアの物語- 一時間後には、私は会社に戻っていた。日本橋のとあるオフィスビルの、中堅の金属素材メーカーにしては広すぎるワンフロアが我が社の本社ということになっており、私はここの法務部に籍を置いていた。私は各支店や工場からのリクエストに…
2021年1月11日 1. 「真夏の冷徹」 小説『レイト・サマー』第1章(前編)-あるオートガイネフィリアの物語- 1 私にはよく見る夢があった。 それは夢というより、まどろみの中で見る、ある種の抽象的なイメージといったほうがよいかもしれない。具体的なシーンの流れを伴わず、時間が滞ったように、ただ漠然とした像が私のイメージを包むのであ…
2021年1月11日 四柱推命との出会い 以前にもお話しましたが、 私は、夢破れて着の身着のまま、 都会から故郷に帰ってきました。 30歳になる少し前のことでした。 しばらく、疲れた心身を休めながら、 無職生活を送りました。 当時は、…
2021年1月11日 21.新たな旅立ち 私と璃子がひとつであることを意識するようになってから、 一つの気持ちが芽生えてきました。 それは、女として輝きたいということ。 これは、私の思いと言うよりは、璃子の思いです。 華麗なワンピース…
2021年1月11日 20.二人だけの場所 小説を書き上げて数か月後、 私たちは新たな生活の場に移ることにしました。 なぜかというと、今までのようにこっそり璃子と密会するのは、 彼女に対して申し訳ないような気がしたからです。 彼女は私に…
2021年1月11日 19.一つの挑戦 私は男としての生きることに限界を感じていました。 弱いところは見せられない、変な恰好をつけなければならない。 そんな生き方はもう嫌でした。 今は、そんな人生からは「いちぬけた」といって、 早く足を洗うべきだ…