前回は私の母親についてお話しましたが、
今回は親戚の女性について語りたいと思います。
私には9つ上の女のいとこがいました。
初めて会ったのが、9歳の夏でした。
私は、小学3年生の夏休みを
東京の伯母の家で過ごすことになり、
その伯母の娘である彼女と出会ったのでした。
彼女は高校を卒業したての、ポニーテールのよく似合う
美しい女の子でした。
彼女はまさに華やかさの真ん中に生きているかのようでした。
私はそのときの彼女の太陽のような笑顔の前では、
気恥ずかしくて、まともに話ができなかったのを覚えています。
彼女は、私のことを本当の弟のように
可愛がってくれました。
彼女は私をディスニーランドや
サンシャイン水族館に連れて行ってくれました。
私は長男でしたので、兄や姉はいないのですが、
まるで、本当の姉と出会ったようで、
とてもうれしかったのを覚えています。
また、彼女は美しいものの二面性を教えてくれました。
あるとき、いつも明るかった彼女が、
部屋の片隅で隠れるように泣いていました。
私は彼女のいつもは見せない表情に驚きました。
そして、大変なことになったと思い、
伯母にそのことを話してしまいました。
「○○ちゃんのバカ!」
後で、彼女はすごい剣幕で私を叱りつけました。
そのときはなぜ怒られたのか分りませんでしたが、
成長した後に、親にも話せないような
何か悲痛なことがあったのだろうと悟りました。
彼女の太陽のような笑顔と、悲しみに暮れた表情との
大きなギャップが今でも忘れることができません。
明るい光のもとに表裏をなすようにできる濃い陰翳。
私は女性の輝かしさとともに、
その裏にある陰の部分を見たような気がしました。
彼女は私にそのような人生の両義性を
教えてくれたような気がします。
ちなみに、彼女はその後、
ミステリアスで魅力的な女性へと成長してゆきます。
私はそんな彼女に単なる親戚以上の感情を持っていました。
ここでは本題からそれるので、詳しくは触れませんが、
機会があれば、また、別のところで、
お話してみたいと思います。