この頃を境に、結婚願望が無くなってしまいました。
もともと、家庭を持って、いろんなものに
がんじがらめになる意味がよくわからないと思っていましたが、
それでも、世間並の平凡な暮らしをしてみたいという気持ちがありました。
しかし、それもどうでもよくなっていました。
誰かが描いた幸せが、自分にも当てはまるわけではありません。
ある初老の男性に
「結婚して子供の二人もいないような奴は負け組だ」と
はっきり言われたことがあります。
しかし、それが何だと言うのでしょう?
人生の勝ち負けは人が決めるものではありません。
「もう一人で生きよう」私はそう決めました。
一方で、璃子との関係は日を追うごとに深まって行きました。
週末になれば、ラブホテルにこもり、
裸の彼女との甘美な時間を過ごすのでした。
ところで、このかなり以前から
自分の中で分断現象のようなものがあり、
この時期、特にそれが悪化していました。
私が人に隠れてやっていることはアブノーマルなことでした。
性的倒錯者と言われればそれまでです。
私の中には、自分自身の行為を厳しく罰する自分もいました。
彼女と過ごす時間は、世界の重力から解放されて飛翔するような
素晴らしいひとときのように思えました。
しかし、ひとたび地上に降りれば、
その身がひどく穢れているような気がしました。
彼女との行為を重ねれば重ねるほど、
その感覚が強くなっていきました。
かといって、もうすでに自分自身を
すでに抑えられなくなっていました。
私と璃子はどこまで堕ちてゆくのだろう?
そういった、漠然とした不安が
私の心に渦巻いていました。
私は悲鳴を上げたい気持ちになっていました。
このままでは自己が崩壊するのではないかと恐れていました。
次第に私は、以前から興味を持っていた
スピリチュアル的なものに
救いを求めるようになっていました。